深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

11-15.どぶろく

 焼酎を買うお金もなく、手作り「どぶろく」で酔っていた頃が懐かしい!とは五木村の自称、小森歌夫さんや大阪府在住のペンネーム元和飲兵衛さんの弁である。どぶろくは、発酵させただけの白く濁った酒で、炊飯米に、米麹や酵母などを加えて発酵させたもので、日本酒の原形とされる。明治以前には、どぶろくは酒蔵だけでなく、農家など各家庭で一般に製造されていて、どぶろくの歴史は古い。3世紀後半に書かれ、当時の歴史や風俗がわかる『魏志倭人伝』には、倭人(日本人)は酒をたしなむという記述があり、どぶろくの起源も米作りと同じ頃であると云われている。

 このように明治以前は、自由に作り飲んでいた庶民のどぶろくも、酒造税が制定され、どぶろくの自家生産や自家消費が禁止されてしまい、現在に至っている。ただ、豊穣祈願祭やどぶろく祭など宗教的行事におけるどぶろくの製造と飲用は、その製造免許を受ければ可能であるが、飲用は神社の境内等の一定敷地内に限られる。
もう少し緩和された施策が「どぶろく特区」である。これは、2002年の行政構造改革によって、地域振興の観点から構造改革特別区域が設けられ、区域内でのどぶろく製造と、飲食店等で消費される場合に限った販売が許可されるようになった。その特区の数は35道府県で約140ほどである。

山都町 三股町 どぶろく大福
図1.山都町のどぶろく 図2.三股町のどぶろく 図3.どぶろく大福(宮崎県三股町)
どぶろく商品の例

 熊本県では、玉名郡の「三加和8つの里グリーンツーリズム特区」、阿蘇市周辺の「阿蘇カルデラツーリズム推進特区」、それに球磨郡の「多良木町どぶろく特区」である。球磨郡では多良木地区でのどぶろくの製造と消費がOKということである。だだし、お土産などとして販売され、多良木町の域外に持ち出す場合は酒税法が適用されるとのことである。

 どぶろくの作り方は実に簡単で紹介したいが、たとえ自家消費用のどぶろくであっても、勝手に作ったら法律違反、懲役5年以下、または50万円以下の罰金が科せられるからである。

 どぶろくは苦手!という人は、宮崎県の三股町に「どぶろく大福」があるらしい。大福の皮にどぶろくのもろみを練り込み、中の餡はどぶろくで作ったホワイトチョコと白餡をミックスした甘さ控えめの大福だそうである。多良木のどぶろく特区の製品は見当たらないので、近県のどぶろくを 図1と2に示した。

 「どぶろく」のことを書いて「球磨焼酎」はどうして?と思われるかも知れないが、球磨焼酎のことは「人吉球磨地方の産物」 10-1.球磨焼酎 の中で詳しく述べているからである。

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